東京都新宿区下落合の「おとめ山公園」は、神田川と目白の高台の中間地、落合崖線の斜面地にある全域が斜面または崖の公園です。地形としては車椅子での散策に向かない公園ですが、2014年に再整備が完了しバリアフリーに改修されました。崖を渡るスロープ、傾斜地をつなぐスロープ、3つの高さにある身障者用駐車スペースなど、車椅子利用者のためのバリアフリー面で面白い工夫がある公園です。
おとめ山公園は、江戸将軍家の狩猟場であった場所で「おとめ」は「乙女」ではなく、進入禁止の「御留」が語源です。当時一般大衆は立ち入り禁止エリアでした。その後幾多の変遷があり、公園として昭和44年に開園しました。
アクセスは高田馬場駅から7分、下落合駅と目白駅から10分と案内されています。一般来園者用の駐車場がありません。身障者用駐車スペースが3か所用意されています。おとめ山公園は一般道路を挟んで、高低差のある5つのエリアに分かれる構造です。高田馬場駅と下落合駅からアクセスすると低地にある2つのゾーンに着き、目白駅からアクセスすると高地にある2つのゾーンに着きます。
身障者用駐車スペースは高地、低地、中間の高さにある「ふれあい広場」があるゾーンの3か所に用意されています。下の写真は中間地の身障者用駐車スペースです。無断利用できないように閉められています。
閉められたフェンスに利用方法が掲示されています。ここから管理事務所に電話をして、管理人に来ていただく利用ルールです。
おとめ山公園全体の状況を紹介します。最も高い位置にあるのは「みんなのはらっぱ」です。幼児向けの遊具が備えられています。
バリアフリートイレは園内2か所に用意されています。その一つが「みんなのはらっぱ」の横にあります。オストメイト装置が備えられています。
「みんなのはらっぱ」の横から、中間の高さにある「ふれあい広場」へ繋がるバリアフリーブリッジ「林間デッキ」が架けられています。このスロープ路は車椅子で問題なく通行できます。
スロープから低地部の「上の池」「中の池」などを見下ろすことができます。
「ふれあい広場」から外に出て、一般道路を横断して「谷戸のもり」エリアに移動できます。
「谷戸のもり」エリア内の傾斜散策路は段差回避スロープ路が整備されています。
スロープ路を通り、低地部の「下の池」や「水辺のもり」エリアに移動できます。
途中の橋には小さな段差がありますが、車椅子で乗り越えられます。
「水辺のもり」の公園出入口が最も低地になります。高田馬場駅からアクセスすると、この入口に着きます。
「水辺のもり」から短いスロープを上がり、一般道路を横断すると、ホタル舎などがある低地部エリアに移動できます。
ホタル舎などがある低地部は、昭和44年から公園として公開されているエリアです。
ホタル舎はおとめ山公園の湧水を利用して蛍の飼育をする小屋で、通常おとめ山公園は夜間閉鎖されますが、コロナ禍以前は毎年7月中旬の土日は夜間開放され、ホタル観賞会が開催されていました。
施設としては古いエリアですが、上の池方面にフラットな舗装路が整備されています。ただし経年劣化で路面が痛んでいる箇所はあります。
上の池は鯉や亀が生息しています。車椅子から観察できます。
車椅子での散策は泉の広場までです。そこからは段差路になります。以上でおとめ山公園のほぼすべてを散策しました。
車でアクセスして身障者用駐車スペースを使いこなせれば、おとめ山公園は車椅子で楽に散策ができる公園です。
下落合駅前には、下水処理施設「落合水再生センター」の地上部につくられた「せせらぎの里公苑」があります。浄化された下水がせせらぎとなって流れるユニークな公苑です。別稿で掲載していますのでご参照ください。
(本稿は2022年8月に執筆しました)