読書バリアフリー法 第一次5ヵ年基本計画の概要

読書バリアフリー法 第一次5ヵ年基本計画の概要

2019年6月に成立した「読書バリアフリー法」の第7条第1項には、「文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を定めると規定されています。

2020年7月に2020年度から5ヵ年を期間とした「基本計画」が決定されました。その「施策の方向性」について概要を紹介します。ポイントを絞り、分かりやすい表現に編集していることをご承知おき下さい。

・アクセシブルな書籍の質量の充実

国立国会図書館、点字図書館、公共図書館などが連携協力して、また行政が支援をして、電子書籍などを充実させる。

出版者に対し、製作のノウハウ、製作に係る基準の作成など、コンテンツの質の向上を図るための情報提供や助言を行う。

・円滑な利用のための図書館の充実

公立図書館や学校図書館のバリアフリー化、司書の配置などを推進する。とくに視覚障害のある児童生徒及び学生が在籍する学校の読書環境を整備する。

また音声読み上げ機能等に対応した電子書籍を提供する民間電子書籍サービスについて、適切な基準を設け、図書館への導入を支援する。

・既存サービスの周知

国立国会図書館やサピエ図書館の既存インターネットサービスについて、研修会の開催やリーフレットの作成等を通じて周知を行い、多くの視覚障がい者が視覚障がい者用データの送信サービスやサピエ図書館を利用できるように取組みを進める。

・情報機器の活用支援と開発支援

読書困難者の読書を支援する拡大読書機、点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の機器の導入や利用を促進する。またデータ送信に利用するパソコン、タブレット、スマートフォンの利用方法に関する相談や貸出の支援を行う。

ICT機器・サービスに関する研究開発やサービスの提供を行う者に、資金面での支援や開発成果の普及を実施する。

・サポート人材の育成

司書などに対し、障がい者サービスに関する内容や支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法の研修を実施し、資質の向上を図る。また障がい当事者でピアサポートができる人材の育成を進める。

製作者である、点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成にも取り組む。

「読書バリアフリー法」第8条では「地方公共団体は、基本計画を勘案して,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定める」とされ、同第6条では「政府は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならないこと。」と規定されています。

この基本計画に基づいて、各自治体で実行計画が立案され、国家予算が編成されます。

(本稿は2020年8月に執筆しました)