東京都港区の「有栖川宮記念公園」は、麻布台地の傾斜をそのまま活用した日本庭園です。車椅子での散策は簡単ではありません。公園のバリアフリールートを紹介します。
「有栖川宮記念公園」には、広場・児童遊園、池・渓谷、図書館などがあります。高松宮殿下が児童福祉のために賜与された公園で、近隣住民の憩いの場です。週末は、インターナショナルな親子連れで賑わう公園です。

立地からイメージするよりも、かなりワイルドな公園です。深山渓谷に立ち入ったような感覚になる箇所もあります。
広場、図書館などがある高台部と、池がある低地部をつなぐ園内ルートは傾斜路で、一部は段差があります。木下坂側に流れる渓谷沿いのルートは、激しくデコボコがある未舗装路です。この2ルートは車椅子で通行出来ません。

アクセス方法です。来園者用の駐車場はありません。最寄駅は広尾駅です。広尾駅からアクセスすると、公園の低地部に出ます。以下、低地部から高地部へ向かう順で、バリアフリールートを紹介します。

駅から向かうと公園の入口「広尾口」があります。入口の先は池です。池の周囲は部分的に車椅子で通行できます。行けるところまで行って戻り、景観を楽しみます。
梅林広場にはかなり近づけます。一方、菖蒲園から渓谷方面へは、すぐに段差路になります。
園内には低地部から高台部へ車椅子で上るルートはありません。低地部の散策が終わったら、いったん広尾口から出ます。

広尾口から出て、南部坂を上り高台部へ移動します。舗装路ですが傾斜がきつい坂です。坂を上ると管理事務所の横に高台部へ入る公園入口があります。
公園入口から入ると広場があります。高台部には3体の彫像があります。広場にあるのは有栖川宮騎馬像。1903年に製作されたとても立派な彫像です。三宅坂の旧陸軍参謀本部に建てられ、この地に1962年に移設。製作されて100年超、この地に来て50年超になります。明治を感じさせる騎馬像です。

広場の脇には、新聞配達の少年像があります。1950年代に各地に建てられた像の一つで、勤労少年の保護育成が目的です。これは昭和の経済成長期を感じる彫像です。
芝生広場のような未舗装広場に建つ像は、笛吹少年の像。1991年に建てられた近代アート作品です。平成の芸術として鑑賞します。
高台部に建つ大きな建物は「都立中央図書館」です。

公園周辺の状況です。有栖川宮公園の高台部に隣接して麻布運動場があり、グランドやテニスコートが整備されています。その並びには「愛育養護学校」。東京では唯一の私立の特別支援学校です。
周辺には各国大使館があります。ドイツ、中国、フランスなどの大きな大使館の壁には、各国を象徴するディスプレイがあります。大使館員の宿舎の外観も特徴があります。カタール、マダガスカルなどの小さな大使館は、建物自体にお国柄がでます。有栖川宮公園周辺は、アップダウンはありますが、見るだけで楽しい大使館巡りが車椅子で出来ます。
有栖川宮記念公園は、車椅子では低地部と高台部に分けて散策してください。坂道を進むことができれば、周辺で各国大使館見学が楽しめます。
都心の静かな禅寺「広尾祥雲寺」の詳しいバリアフリー情報を別稿で掲載しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2019年10月に執筆しました)