「家具の村内八王子」の村内ファニチャー八王子本店内にある美術館です。2013年にリニューアルして、車椅子で鑑賞できるバリアフリー美術館になりました。現地の状況を紹介します。
車椅子利用者は、アクセスは車が便利です。家具店と共用の無料駐車場があります。地下駐車場を利用すれば、雨天でも濡れずに美術館にアクセスできます。
観覧料の障がい者減免制度があり、障害者手帳の提示で本人が無料に減免されます。美術館横のトイレにはバリアフリートイレはありませんが、家具店内にバリアフリートイレがあります。
バリアフリーで車椅子での利用に問題のない美術館です。美術館フロアへは家具店内のエレベーターで上ります。村内ファニチャー八王子本店の本館は、基本が段差構造の建物。3棟を階段で巡るように意図された設計です。そのため、建物中央に「バリアフリーエレベーター」と称される、全階停止するエレベーターが後付され、車椅子でも全館を移動できるように改良されています。
美術館に行くエレベーターは1系統だけです。店内の構造案内図が各所に掲示されていますが、解り難い場合はスタッフに聞いてください。丁寧に案内をしていただけます。
エレベーターを降りるとホールがあり、車が2台展示されています。

「BMWイセッタ」と「メッサーシュミット」という1950年代の車です。

ホール左手には休憩室があり、絵画や彫刻作品が展示されています。ここまでは無料エリアです。車椅子での利用に問題はありません。
美術館に入ります。入口受付で障害者手帳を提示して入館手続きを行います。ワンフロアを7つの展示室に区切った美術館です。
最初の展示室は「椅子の森」。20世紀冒頭のマッキントッシュの椅子など、デザインチェアが主役の展示室です。椅子のデザインと共通するテーマの絵画も展示。「家具と絵画のコラボレーション」がコンセプトです。
第二展示室は「椅子の花園」。サーリネンのチューリップチェアなど、20世紀中ごろのデザインチェアを中心とした、家具と絵画の展示です。異色なのは「柏戸椅子」。横綱柏戸に贈られた、1961年に製作された、巨木をくりぬいたような椅子です。ここまでの2室に展示されているデザインチェアは、座ることは出来ません。
第三展示室は「花鳥風月」。サブテーマは「日本の雅 西洋の華麗」。展示室の左側は畳の上に日本の婚礼家具など、右側はフローリングの上にイタリア製のソファセット他。そしてそれぞれの世界観にあった絵画が展示されています。類のない不思議な空間です。ここまでは、どちらかと言えば家具が主役の展示室です。
第四展示室以後は、絵画が主役の展示になります。第四展示室はミレーやコローなどの「バルビゾン派」の展示。第五展示室はルノワール他の「印象派」と智内兄助や田淵隆三などの「現代日本の画家」の展示。第六展示室は「ヴェネツィア」をテーマにした展示。最後の第七展示室はフランスと日本の画家たちの展示。東郷青児の作品もあります。
第四展示室から第七展示室に置かれている椅子は、座ることが出来ます。展示作品ではないものの、いずれもそれなりの品格があるソファなどが配置されています。
他の展示作品を少し紹介します。タンバリンの底に描かれたマネの「スペインの舞踏家」。マナブ間部の「巨人」。エミール・ガレの器もあります。いずれも村内家具の創業者が蒐集したもの。コレクションの方向性が多様です。
村内美術館は「家具と絵画のコラボレーション」が楽しいバリアフリー美術館です。
八王子市にある「東京富士美術館」を別稿で掲載しています。ご参照ください。
(本稿は2016年7月の取材に基づいています)