「茨城県フラワーパーク」として1985年に開園。2021年4月に名称を「いばらきフラワーパーク」に変更してリニューアルオープンしました。茨城県の旧「八郷(やさと)町」、現在は石岡市にある有料施設です。茨城県の県花はバラ。園内には900種類のバラが植栽されています。車椅子からみたリニューアル後の現地のバリアフリー状況を紹介します。

駐車場の状況です。900台を収容する無料駐車場があります。身障者用駐車スペースは、正門から入るメイン駐車場にあります。今回取材したのは秋バラシーズンの休日。駐車場の混雑が原因で、300mほど渋滞が発生。そのためメイン駐車場は右折入場が制限されていました。混雑時に身障者用駐車スペースを狙うなら、フルーツラインを土浦方面からアクセスすると、メイン駐車場へ左折入場できます。
正面の広い駐車場「トレタ直売所」の前にも4台分の身障者用駐車スペースが設定されています。

しかしフラワーパークの利用に便利なのはそこではなく、身障者用駐車スペースが8台分ほど用意されている、正門から入ってすぐ右側にある小さな駐車場です。知らないとわかり難い設定です。

園内のバリアフリートイレの状況です。主要な施設には、バリアフリートイレが設置されています。ローズファームマーケット&カフェには屋内と屋外。下の写真は屋内トイレで、スペースは一般的なサイズの個室で、ウォシュレット付き便器、オストメイトが備えられています。

インフォメーション棟の中のトイレ。

ローズファームハウスのバリアフリートイレの入口付近です。

この他にアトリエローズファーム内、そして正門から入ってすぐ右側にある駐車場のトイレ棟にバリアフリートイレがあり、確認できた限りは、いずれも綺麗なトイレです。
利用に注意すべきバリアフリートイレが2か所あります。トレタ直売所棟の内のバリアフリートイレは、「キッチンどんぐり」の屋内から利用する構造ですが、「キッチンどんぐり」からトイレに行く途中のドアが、車椅子が通行できない狭い幅です。車椅子でバリアフリートイレに行くことが出来ませんでした。
もう一つ、正面駐車場奥のトイレ棟のバリアフリートイレは、広さ、設備は問題ありません。

しかしドアにカギがありません。「未使用」という札で空いていることを確認し、裏返して「使用中」にして使用します。

いばらきフラワーパークの入口は、正面駐車場から高い位置にあり、正面ルートは階段です。車椅子では駐車場からスロープ路で上がります。下の写真はパークゲートの高さから正面駐車場を見た光景です。

正門から入ってすぐ右側にある駐車場から、パークゲートへ上がるスロープ路が2本あります。この内の1本のスロープの傾斜が穏やかです。車椅子では、このスロープ路を利用することをお薦めします。

広い正面駐車場奥側からのスロープ路は1本で、ややきつい傾斜角度があります。

下りは後ろ向きで降りる傾斜です。

パークゲートの窓口は有人対応です。ここで入園料を支払います。いばらきフラワーパークの入園料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。パークゲート窓口に障害者手帳等を提示して減免措置を受けます。
パークゲートは車椅子で問題なく通過できる幅があります。

園内のバリアフリー状況です。いばらきフラワーパークはリニューアルしましたが、バリアフリー改修が行われていない路面もある、新旧の設備が混在する施設です。
パークゲートから最初に「順路」として案内されているのは「バラのトンネル」です。パークは傾斜地にあり、園内ではパークゲートが最も低い位置になります。「バラのトンネル」は上り坂ですが、少し力を入れれば車椅子で上がることができる傾斜路です。

トンネルを上がると「インフォメーション」棟があります。この棟は新しくてバリアフリー。フラワーパークのイメージが展示紹介されています。

今回取材時はワークショップが開催されていました。

インフォメーションから坂道をさらに上がると、「バラテラス」エリアにでます。

舗装された散策路があり、その周囲に低農薬で育成されたサスティナブルなバラ園が整備されています。

バラテラスのバラ園内には、テーブルやベンチが置かれています。

ただし散策路を外れると未舗装路面なので、車椅子では無理のない範囲での利用に限られます。

バラテラスからローズファームハウスへは、舗装散策路を通ると遠回りになり、ローズファームハウスの裏側に着きます。

ローズファームハウスはレストランとテイクアウトカフェが営業する、リニューアルで誕生した目玉施設の一つ。お洒落なデザインとデコレーションが素敵です。

下の写真はテイクアウトカフェの内装です。

次の写真はレストランのエントランス付近の様子。レストランは並んで購入するセルフサービス店で、屋内外に可動式のテーブル席が配置されています。

ただし段差解消は雑な箇所があります。下の写真は出入口の床面で、車椅子には厄介な小さな段差が残っています。

ローズファームハウスから坂道を下ると、ワークショップが開催されるアトリエローズファームがあります。この施設は元々ある古い建物が部分的に改装されています。下の写真のように、メインエントランスの段差がリニューアル工事で解消されています。

アトリエローズファーム内にある小さな鑑賞温室コーナーは、未舗装路面ですが車椅子で移動可能です。

アトリエローズファームの奥にバラの品種園などのエリアがあります。この一帯はほとんどリニューアル工事が行われていません。舗装路面は経年劣化で荒れている箇所が多く、通路の段差解消は雑です。

パークゲートの近くある「香りのバラ」から「季節の花」周辺は、比較的傾斜が少ないエリアです。

ただし路面はバリアフリー改修されていません。車椅子ではつらい側溝の段差などが残されています。

散策路の路面も小さなデコボコがあるタイプ。リニューアルが施されていない、原形のままだと思われます。しかしながら無理のない範囲の移動だけでも、車椅子からバラの鑑賞は可能です。

小高い丘「グリーンヒル」は、車椅子ではつらい急坂を上がります。車椅子散策はお薦めしません。グリーンヒルの下の舗装散策路なら車椅子で移動可能です。散策路の脇に、今回取材時はダリアが咲いていました。

綺麗なダリアの列が続きます。素敵な散策路です。

そこからしばらく、ほぼフラットな舗装路を進みます。

すると「ダリアと芍薬の園」にでます。下部は段差路なので、車椅子では舗装散策路から、ダリアを見下ろす見学になります。

その先には鯉が泳ぐ池があります。その隣が無料エリアの施設「ローズファームマーケット&カフェ」の建物です。

無料エリアにあるローズファームマーケット&カフェの状況です。有料エリアからローズファームマーケット&カフェへ移動するルートは、手動の柵を開けて通過します。車椅子では開けるのが不便な柵で、その先の箇所も狭いので、いったんゲートパークから出て、その横のフラットスペースから入り直すルートをお薦めします。

ローズファームマーケット&カフェは、スペースの余裕があまりありません。今回取材時は混雑していて、車椅子での利用は苦戦しました。また2Fのデッキフロアへは階段のみです。マーケットとカフェは混雑していましたが、館内1Fにあるアートスペースは空いていました。面白い作品が並ぶ空間です。

アートスペースから駐車場を見下ろす地点へ出るルートは、木製のデッキで段差解消されています。

トレタ直売所周辺の状況です。正面駐車場横の無料エリアに「yasato de toreta」直売所とレストランがあります。今回取材時はレストランが閉店後で、店内を確認できませんでした。直売所の店内はあまりスペースに余裕がなく、車椅子で移動できる通路幅はありますが、混雑していると車椅子での買い物は苦戦すると思われます。

リニューアルされた「いばらきフラワーパーク」は、傾斜地のためアップダウンがあり、部分的に古さが残る箇所もありますが、新しい施設は新鮮な魅力がある公園です。
石岡市の「常陸風土記の丘」の詳しいバリアフリー情報を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2021年10月に執筆しました)