埼玉県深谷市には歴史を訪ねる無料施設があります。その中で「誠之堂・清風亭」と「旧煉瓦製造施設」は出入口が段差構造なので、車椅子での内部見学は簡単ではありません。それぞれ車椅子でどこまで見学が可能なのか。現地の状況を紹介します。アクセスはどちらも車が便利です。
「誠之堂・清風亭」
「誠之堂」と「清風亭」は、隣接して展示されています。東京の瀬田にあった時代も、2棟は隣接して建っていました。往時と同じ方角を向き、ほぼ同じ間隔で移築されています。
見学の受付は「深谷市大寄公民館」内です。公民館の建物の中から、見学ルートにでることができます。公民館で受付を済ませないないと、見学はできません。公民館の駐車場には、身障者用駐車スペースが屋根なしで2台分用意されています。
そこから公民館のエントランスに向かいます。出入口は自動ドアです。
深谷市大寄公民館の1Fに、バリアフリートイレが1つ用意されています
スペースは一般的なサイズの個室で、ウォシュレット付きの便器が備えられています。
見学手順の概要です。公民館内の見学受付で簡単な記帳をします。
そこから手動ドアを開けて、公民館の中庭のような空間に出ます。
すると正面に「誠之堂」と「清風亭」があります。中庭内はフラットな舗装路面で、車椅子で通行できます。
「誠之堂」と「清風亭」の周囲は、未舗装路面で浅い砂利が敷かれています。それでも車椅子はスタックしませんでした。見た目よりも楽に移動できる未舗装路面です。
受付を担当していただいているボランティアスタッフが、「誠之堂」と「清風亭」の正面まで案内してくださいました。
現在はコロナ対策で、屋外で簡潔な解説をしていただけました。5分ほどの解説で、2棟の歴史と概要、そして移築された理由などが理解できます。解説の後は自由見学です。
2棟とも内部見学が可能ですが、出入口は段差構造で、土足を脱いでスリッパに履き替えます。
建物の外観は車椅子で見学できます。2棟とも未舗装路面ですが、車椅子で苦労することなく、外周を回ることができました。
「誠之堂」の出入口は段差があります。
玄関内にも段差があります。
段差を乗り越えると往時を再現した室内の見学ができます。
室内にも解説版があります。
次は「清風亭」の出入口と内部の様子です。入口は段差構造です。
段差を乗り越えれば室内を見学できます。
両施設とも、この程度の段差は介助等で上がることができる人は、内部見学が可能です。
「旧煉瓦製造施設」
明治から操業された煉瓦工場の史跡です。国重要文化財に指定されているのは「旧事務所」「ホフマン輪窯6号窯」「旧変電室」「備前渠鉄橋」の4つの施設です。「ホフマン輪窯6号窯」は、保存修理のため2019年から見学を休止しています。再開は2024年頃の予定です。
「旧事務所」内が資料館のように整備され、ボランティアスタッフが常駐しています。見学をすべき「旧煉瓦製造施設」は、「旧事務所」です。
「旧事務所」の前庭が駐車スペースです。駐車区画はなく、適当に車を停めます。
そこから「旧事務所」の正面出入口までは、段差の無い舗装路面です。
正面出入口が受付です。ここで簡単な記帳をします。そしてここに2つの段差があります。他にバリアフリールートはありません。内部は土足見学で、大きな段差はありません。この段差を何らかの方法で乗り越えることができれば、車椅子で内部の見学ができます。
車椅子で無理をして段差に挑戦したところ、1段目は前輪を上げて乗り越えることができました。しかし2段目は高さがあり、無理でした。車椅子ごと持ち上げるか、介助歩行が多少でも可能な人なら、ここだけ歩いてもらう必要があります。
展示コースの概要です。4つの部屋を使い、煉瓦の歴史などが展示解説されます。今回取材時は、ボランティアスタッフの方から、丁寧な説明をしていただけました。屋内見学ですが、4つの部屋で暖房が入っているのは1室だけです。冬季の見学は寒さ対策をしてください。「旧事務所」内に一般トイレはありますが、バリアフリートイレはありません。
解説を聞きながら見学をすると、煉瓦のことはもちろん、深谷ネギの美味しさの理由が土の性質にあることが理解できました。退館するときも、入館時と同様に正面出入口の段差を通ります。
「誠之堂・清風亭」は外観だけなら車椅子で見学可能です。「旧煉瓦製造施設」の「旧事務所」は、2つの段差が越えられれば車椅子で見学できます。
(本稿は2020年12月に執筆しました)