1300年以上の歴史がある「法隆寺」を車椅子で参拝しました。車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。
世界最古の木造建築である法隆寺はバリア構造です。ところが想像以上にスロープの設置が進んでいます。そうはいってもバリア箇所はあり、難所ではお寺のスタッフが力技でサポートしていただけます。法隆寺の在り様を壊さないようにスロープを造り、一部は人力で車椅子をサポートする。これが法隆寺のバリアフリーです。

法隆寺の正面入口は「南大門」です。門は階段構造ですが、正面から見て左側にスロープルートがあります。
「南大門」を抜けると「護摩堂」の横までが砂利路面です。それほど深い砂利ではないので、車椅子でなんとかクリアできます。
「護摩堂」の横に段差があり、両脇がスロープになっています。このスロープの前後の砂利はやや深く、車椅子での通行は力と気合が必要です。スロープを上った先に「西院伽藍」が見えます。

「西院伽藍」までの路面は、やや深い砂利路面です。「西院伽藍」の入口付近に数名のスタッフが見えます。車椅子を見ると二人が来て下さり「お手伝いします」と車椅子を力技で引っ張ってくださいました。いっきに砂利路面をクリアし、その勢いで「西院伽藍」入口の急なスロープを上がりました。ここで拝観料金を支払います。

法隆寺の拝観料金は障がい者減免制度があり、車椅子利用者の場合は、本人と介助者2名までが半額に減免されます。2名の介助が必要な施設ということでしょう。
閉門まで1時間を切ると、拝観料が少し安くなります。これはすべての施設を見る時間がないため、ということ。「今回は大宝蔵院だけをみたい」というような人は、閉門1時間を切った時間に行かれると、少しお得です。

有料エリアに入ります。最初は西院伽藍。健常者の拝観ルートは、中庭から五重塔と金堂を巡ります。ところが中庭は深い砂利面で、車椅子での通行は無理です。車椅子利用者は回廊を左回りで一周して、五重塔と金堂を拝観します。現地でスタッフが車椅子観覧ルートを教えてくれるので、従ってください。

西院伽藍の回廊を一周すると、最後は健常者と同じ出口になります。この出口は階段で、横にスロープがあるのですが、スロープは急な下り坂です。ここもスタッフが力技で手伝ってくださいます。急なスロープを介助を受けて通過して「大宝蔵院」方面へ向かいます。

次に「西院伽藍」から「食堂」横を通り「大宝蔵院」へ向かいます。この間、浅い砂利面はありますが、車椅子での移動に大きな問題はありません。
「大宝蔵院」は平成10年に落成した近代建築物です。法隆寺の国宝、重文が展示されているバリアフリーな施設で車椅子で鑑賞できます。

一般的な拝観コースは、この後「夢殿」がある「東院伽藍」へ向かいます。道は浅い砂利面です。この間にある「東大門」のスロープは、車椅子で通過できる普通の傾斜角度です。それほど苦労せずに車椅子で「東院伽藍」へ行くことが出来ます。「夢殿」や「鐘楼」を見学します。以上で一般的な拝観は終了です。

法隆寺へのアクセスは、車椅子利用者は車が便利です。駐車場の状況です。
町営駐車場は1回500円です。いくつかある民間駐車場は公営駐車場に比べ、混雑時は高く、閑散時は少し安い値段のようです。乗降スペースをゆったり確保したい人は、町営駐車場が絶対的なスペースが広く、身障者用駐車区画が1台分あります。
もっとも法隆寺入口に近いのは、土産屋の駐車場です。ただしお店での買い物が義務になります。
トイレの状況です。バリアフリートイレは、法隆寺内と町営駐車場内のトイレにあります。現時点では、どちらも設備が古いトイレでした。チェックできた限りですが、近隣のお土産屋さんにはバリアフリートイレはありません。車椅子でのトイレ事情はいまひとつです。CVSなど近隣の商業施設で借りることをお薦めします。
バリアフリー面はこのような状況ですが、法隆寺のスタッフは車椅子にとても優しく対応してくださいます。車椅子で困ったら、お寺のスタッフに声をかけて助けを借りてください。
(本稿は2018年6月の取材に基づいています)