曹洞宗諏訪山吉祥寺は、東京都文京区本駒込に建つ大寺院です。創建当初は現在の皇居和田倉門付近にあり、徳川家康の時代に現在の水道橋付近に移転。1657年に発生した明暦の大火で焼失して現在地の本駒込に移転しました。
水道橋にあった吉祥寺の周辺に住んでいた住民も、明暦の大火で焼け出され、その移転先が吉祥寺村、現在の武蔵野市吉祥寺です。吉祥寺の語源になったのは、この本駒込の吉祥寺です。
吉祥寺は広い敷地に建つ大寺院です。江戸時代は仏教の学校である江戸最大の「旃檀林(せんだんりん)」で、常時1,000名以上の学僧が学んでいたとされています。
江戸の名刹吉祥寺は車椅子でお参りができます。車椅子からみた現地の状況を紹介します。
参拝者用の駐車場はありません。文京区のHPでは本駒込駅から徒歩7分と案内されています。
本郷通りに面して建つ山門は、空襲での焼失を免れた江戸時代の門。見事な木彫りの装飾が施され、歴史の重みを感じます。門には「旃檀林」の文字。江戸時代の学僧たちはこの門を通り、吉祥寺で仏教を学びました。往時、山門前の本郷通りは、数多くの書店が立ち並ぶ本の街であったそうです。
山門の下は段差があり車椅子では通行できないので、山門の横の車道を通行して境内に入ります。
山門から本堂に続く参道が始まります。舗装路面ですが、石畳風の路面なので、小さなデコボコがあります。車椅子に衝撃がこないように、ゆっくり進んでください。
まもなく左手に「お七 吉三郎 比翼塚」があります。放火して死罪になった「八百屋お七」の碑。その恋の舞台が「吉祥寺」です。
その先には「吉祥寺大仏」が鎮座。高さ1.5mほどの台座に座る、座高2mほどの大仏様です。
参道左側の並びにある「茗荷稲荷」の祠は趣があります。5段ほどの階段の上に祠があるので、車椅子では参道からのお参りになります。
参道の右側は墓地エリア。ひときわ大きな案内が掲示されているは、明治の作家「川上眉山」のお墓。尾崎紅葉などと同時代の小説家です。「二宮尊徳」のお墓もあり、薪を背負った像も建てられています。
参道を進むと、右側に見えてくるのが「鐘楼」。5段ほどの段の上に建つ立派な鐘楼で、大きな鐘があります。車椅子から見学は可能です。
見どころが多い参道を進みます。吉祥寺最大の見どころは、空襲の焼失を免れた経蔵です。1804年に建てられたものと伝えられています。
この中に貴重な本が収蔵され、それを読むために学僧たちが出入りしていたそうです。随所に施された見事な彫刻は必見。瓦屋根は重厚感にあふれます。建物自体が江戸時代から生き続けている生命体のような、不思議な力を感じる文京区指定文化財です。路面は多少デコボコしていますが、経蔵の周りから車椅子で外観を見学できます。
参道の終点は本堂。1964年に再建されました。「本堂」はデザイン的にはシンプルな建築物です。参拝所は数段の段差があり、車椅子では段の手前からのお参りになります。
本堂は大きく、また本堂前は大きな空間が広がります。このサイズ感が、江戸時代には千人の学僧が学んでいたお寺であることを今に伝えます。
いつもは静かなお寺ですが、境内は桜や紅葉黄葉が美しい穴場スポット。その季節は少し賑わうこともあります。近隣は神社仏閣の密集エリア。この付近は東京街歩きの人気コースです。境内の路面は少々デコボコがありますが、吉祥寺は車椅子でお参りができる名刹です。
「駒込大観音」と呼ばれる十一面観音様を参拝できる「光源寺」を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2021年6月に執筆しました)