車好きが斬る 主要メーカー福祉カー 間違いのない選び方

車好きが斬る 主要メーカー福祉カー 間違いのない選び方

障がいのある家族のために福祉車両を購入する場合、どのメーカーのどの車種を選ぶべきか。高額品なのに商品情報が少なく、悩まれている方が多いようです。

2020年4月時点で、主要メーカーがカタログモデルにしている主な車種の、自動車としての基本機能や特徴を紹介します。

《トヨタ》

〇アルフォード/ヴェルファイア

国内のミニバン市場の頂点に立つ兄弟車種で、販売系列店と多少の外観デザインが違うだけで、車としては同じです。

派手な外観と豪華な内装でミニバン好きに支持され、ライバル車種を打ち負かしました。このデザインセンスを好むか嫌うかが、この車を選ぶ際の最大の問題です。

現行モデルは2015年の発売で、2017年にマイナーチェンジ。次期新型は2020年の登場が予定されています。福祉車両は新型発売から半年~1年遅れの発売が予想されますが、車としてはモデル末期です。

〇ヴォクシー/ノア

5ナンバーサイズミニバンの双子車です。ヴォクシーが若者向け、ノアがファミリー向けという微妙な色分けがあります。

現行モデルは2014年のデビューで、2017年にマイナーチェンジ。次期新型は2021年の発売が予想されています。

欠点の少ない万能車で、福祉車両としてのバリエーションが豊富です。もっとも売れている福祉車両はこれです。迷ったときは、ヴォクシー/ノアを選べば間違いはありません。ただし無難すぎて、車好きからすると、面白みや華やかさは足りない車ではあります。

〇シエンタ

ホンダの「フリード」を追撃するコンパクトミニバンとして、現行モデルは大胆なデザインで2015年にデビューしました。2018年にマイナーチェンジ。現時点では次期新型に関する正確な情報はありません。

性能、価格のバランスがとれた良い車です。室内の狭さと、大胆な外観デザインが気にならなければ、お薦めできます。ホンダ「フリード」の福祉車両も良い車なので、比較検討してください。

〇プリウスα

ミニバンが嫌いなら、現行のトヨタ福祉車両カタログモデルで唯一のステーションワゴンが「プリウスα」です。他にはスバルの「レボーグ」があります。

現行のプリウスαは、2009年に発売された3代目のプリウスをベースにしたワゴンモデルで、2011年にデビューし、2014年にマイナーチェンジを受けています。プリウスは2015年に4代目に進化し、すでに2018年にマイナーチェンジしています。

プリウスαは、設計の古さが問題です。正式なアナウンスはありませんが、近いうちに新型カローラツーリングの福祉車両が発売される可能性があります。ミニバン嫌いの方は、それを待つのも作戦です。

《日産》

〇エルグランド

日産のトップグレードになるフルサイズミニバンです。現行モデルは2010年のデビューで、2014年にマイナーチェンジしています。次期新型の正式なアナウンスはまだありません。

設計の古さが最大の問題です。現時点では積極的に選択する理由はない車です。

〇セレナ

5ナンバーサイズのミニバンです。ライバルはトヨタの「ヴォクシー/ノア」、ホンダの「ステップワゴン」で、国内ミニバン市場の最激戦クラスです。

現行モデルは5代目で2016年にデビュー。その後にマイナーチェンジ、e-powerモデルの投入などが行われています。このクラスで販売台数一位を記録した年もある人気車種です。デザインさえ嫌いでなければ、迷ったらセレナを選べば、大きな問題はありません。

福祉車両も複数のタイプとグレードがあり、選択肢は豊富な車種です。次期新型モデルは2021年の発売が予想されています。

〇エクストレイル

世界で売れている人気のSUVモデルです。福祉車両のタイプとしては「助手席スライドアップシート」しかありませんが、それでよければ面白い存在です。

ただしトランクスペースは、あまり余裕がありません。またSUVなので、やや高い位置に車椅子を担ぎ上げて収容します。実車で車椅子を積載して、実用可能かどうかを確認する必要があります。

現行モデルは2013年のデビューで、2020年にも新型が発売される予想です。車として評価は高いのですが、すでにモデル末期です。

《ホンダ》

〇オデッセイ

現行モデルは、ミニバンらしいルックスに変わって2013年にデビューした5代目です。2017年にマイナーチェンジ。次期型は2021年から2022年に登場すると予測されています。

ミニバン好きで、トヨタのアルフォード/ヴェルファイアのデザインが受け入れられない人は、オデッセイは有力な選択肢です。

3列目シートはスライド機能がなく、3列目を使用した状態のトランクスペースは案外余裕がありません。福祉車両ではない一般車両でも同じなので、車椅子が縦積みで搭載できるか、実車で確認することをお薦めします。

〇ステップワゴン

5ナンバーサイズ箱型ミニバンの元祖。前席乗車、後席乗車、車椅子乗車と、すべてのタイプが用意されている、ホンダ福祉車両の中核車種です。

現行モデルは2015年にデビューした5代目。次期モデルの登場は未定です。

華やかさとは逆の機能美を追求した箱型デザインが嫌いでなければ、万能型福祉車両としてお薦めできます。

〇フリード

走りと装備、そして価格のバランスがとれた、人気のコンパクトミニバンです。現行モデルは2016年にデビューした2代目で、2019年にマイナーチェンジを受けています。

ステップワゴンと同様に、福祉車両には前席乗車、後席乗車、車椅子乗車と、すべてのタイプが用意されています。小さいので車としての取り回しも楽です。

このサイズの車両で問題のない人には、一番のお薦め車種です。ライバルはトヨタのシエンタ。ぜひ比較検討してください。

《マツダ》

〇CX-5

人気のSUVモデルで、助手席リフトアップシートのタイプしかありません。また荷室はそれほど余裕がないので、車椅子を搭載するとほぼいっぱいになります。この条件でも構わない人で、SUV好きな人にとっては、有力候補です。

現行モデルは2017年のデビューですが、マツダは年次あるいは随時にモデルをアップデートしています。今購入できる福祉車両のCX-5のベース車両が何年何月式なのかによって、仕様が異なります。直近では2020年1月に年次改良モデルが発売されています。

カタログ上選択できる福祉車両は、ディーゼルとガソリン、そして2WDと4WDの組み合わせの4通りあります。車好きにとっては魅力的な福祉車両です。

《スバル》

〇レボーグ

レボーグの他に、スバルはレガシィアウトバックとインプレッサにも福祉車両を用意しています。この3車種はいずれも助手席リフトタイプです。

現行レボーグは2014年のデビューで、2020年中に新型が発売される予定です。モデル末期ですが、走りを重視したい人にはお薦めできる車種です。

これまでの経験では、スバルの福祉車両は実際には受注生産です。カタログモデルとして発表されていますが、仕様、価格などは未公表で、販売店経由で本社に確認する必要があります。その時点でベース車両に指定できるグレードは限定され、そのグレードによって価格が変わります。納期は不安定で、工場の生産計画によっては、かなり時間がかかるケースがあるようです。もっとも困るのは、福祉車両のデモ実車がないので、実際の助手席リフトがどうなっているのか確認ができません。過去の経験では、群馬工場で福祉車両の完成車を見学できるかもしれない、と回答されたことがあります。

スバルも日々サービスの改善に努めるはずなので、状況は好転するかもしれませんが、上記のような対応もありえる覚悟で、販売店に照会してください。

以上、2020年4月時点でカタログに掲載されている主な福祉車両の状況です。障がいのある家族と、安全で安心な外出ができる社会であることを願います。

(本稿は2020年4月に執筆しました)

別稿で「家族のための福祉カー選び 障がいの状況にあった車両タイプ」を掲載しています。ご参照ください。