車椅子のまま乗車できるのが「介護タクシー」、ストレッチャーで寝たまま乗車できるのが「民間救急車」。どちらも一般的なタクシーと同様の認可制の事業です。なおサービスの呼称は正式名ではなく、事業者によって様々です。
実際に利用するとどうなのか、設備、サービス、料金の概要を紹介します。障がい者が利用した場合の、料金への公的な助成制度はありません。
「介護タクシー」
車椅子ごと乗り込める機能がある、ワゴン系車両のタクシーです。
一般のタクシーと同様に運転手1人でサービスします。
スロープまたは昇降機のセットは運転手が行います。またヘルパーの有資格者なら、車椅子を押すなど、簡単な介助が担当できます。
様々なタイプのタクシー車両がありますが、最大数の同乗者を可能にするのは、3列シートの車両で、3列目の半分に車椅子が入るタイプです。総定員数が7名の車両の場合、運転手が1名なので、最大6名が同乗できます。
他に最大4名同乗のタイプがあります。手配の際に、同乗者の数は重要です。
料金は迎車料金と走行運賃で、通常のタクシー料金と変わりません。これに介助料が千円程度プラスされるのが相場です。深夜割増料金はあります。
駐車場から目的地まで車椅子を押すなど、追加する介助行為があると、料金に加算されます。
遠距離利用や観光利用などで長時間利用する場合は、距離制ではなく時間制を選択することができます。
全般に普通のタクシーを予約して利用する場合と、料金面はほぼ同じ感覚です。
「民間救急車」
病気で重症の人が利用するサービスです。
例えば、酸素吸入が必要な状態で地元の病院に入院し、そこから患者側の希望で、大学病院に転院するときなどに利用されます。
ストレッチャーでそのまま乗れるタイプの車両で、酸素ボンベ装置などがあり、運転手の他に、簡単な医療的ケアが出来る有資格が同乗する特殊なタクシーです。
それらの整備について所轄の消防署の認定を受けていますが、救急車とは違い、赤信号を進む緊急車両ではありません。あくまでタクシーです。
転院する場合の、利用シーンの実例です。
入院中の病室で、ベッドから車用のストレッチャーに乗ります。
一般的には、ここまでは病院の看護師が手伝ってくれます。
タクシーのスタッフの介助で車両へ移動、救急車が到着する場所などに駐車して待っています。
ストレッチャーがそのまま入る改造車両です。衝撃を感じることなく、乗りこめます。
3列シートタイプのミニバンがベース車両の場合が多く、ストレッチャーが2列目3列目の半分を占拠します。
したがって、運転席と助手席の他には、2列目と3列目に1席ある構造です。
タクシースタッフ2名が、運転席と3列目の1席に座り、酸素ボンベ操作などをします。このタイプの車両の場合、同乗できる家族は、助手席と2列目1席の計2名が上限です。
運転はとても丁寧です。救急車ではないので、信号待ちをします。スピードを出さないので、普通の車両の移動よりも、時間がかかります。
料金体系は、通常のタクシーとしての運賃に加え、介助する有資格者の人件費や酸素ボンベ使用料金などが加算され、高額になります。
料金のイメージですが、昼間に20km先の病院に1時間乗って転院した場合、通常のタクシー運賃が5千円、酸素ボンベ代が5千円から1万円、人件費が1万円から2万円くらいが相場です。1時間の利用で、数万円単位の料金になります。
予約する際に時間的な余裕があるなら、複数の業者に簡易な相見積りをとることをお薦めします。
介護タクシーは、一般的なタクシーとほぼ同じ感覚で利用できます。
民間救急車は、高付加価値な特殊移動サービスで、一般に利用料は高額です。
(本稿は2020年1月に執筆しました)