東京都三鷹市にある国立天文台は、敷地内が一般開放されています。見学コースには大正時代に建設された施設が残り、往時の望遠鏡などが展示されています。見学コースは車椅子で散策可能です。現地のバリアフリー状況を紹介します。
徒歩圏に駅はありません。車でのアクセスが便利です。一般来場者用の有料駐車場があります。
身体障がい者でかつ車椅子利用者は無料駐車場が利用できます。一般車両通行禁止の正門からキャンパス内に車で進入します。
門の先右側に守衛所があります。この建物は「門衛所」で国の登録有形文化財です。ここで障害者手帳等を提示して、車椅子利用と駐車場の利用を申告します。簡単な記帳をして、見学者シールと駐車許可書を受け取ります。そして施設スタッフから駐車場の場所の説明を受けます。
今回取材時は、正門の先正面にある「中央棟」前の身障者用駐車スペースを案内されました。ここに限らず、キャンパス内には複数個所に身障者用駐車スペースが用意されています。
見学者は見学コースに限り散策できます。コースを外れて他の施設に行くのはルール違反です。
見学コースはほとんどアップダウンがない舗装路で、車椅子で問題なく移動できます。周回コースではなく、すべての施設を巡るには、同じ道を行ったり来たりするコースです。すべてを巡って、全行程で2㎞程度のコースです。
見学コースの約半分は、大正時代からある豊かな森、武蔵野の雑木林の中を通ります。
木立の中に忽然と大正時代の天文施設が現れます。
トイレの状況です。今回取材時はコロナ対策で、展示室など一部の施設は閉鎖されていました。そのため「ドームシアター」内の屋内トイレは確認できていません。案内ではバリアフリートイレがあるようです。
職員専用駐車場に隣接して独立トイレ棟があり、バリアフリートイレが1つ用意されています。一般的な公衆トイレの仕様です。
主な見学施設のバリアフリー概況です。「第一赤道儀室」は大正10年築の天文台最古の建物で、口径20cmの屈折望遠鏡があります。ただし入口まで10段強の階段があり、車椅子では内部見学はできません。
「アインシュタイン塔」は昭和5年に完成しました。塔全体が望遠鏡の筒の役割をしています。見学は外観のみ。車椅子で近づいて見学できます。
「大赤道儀室」は大正15年の築。高さ19.5m、ドーム直径が15m。内部には65cm屈折望遠鏡があります。今回取材時は外観のみ見学可でした。舗装路を通り、車椅子で近づけます。
「旧図書庫」は昭和5年の築。国登録有形文化財です。外観のみの見学で、散策路から車椅子で見学できます。
「レプソルド子牛儀室」は大正14年の築。子牛儀資料館として内部見学ができます。展示されているレプソルド子牛儀は、1880年ドイツ製で、国指定重要文化財です。
5段の階段を上がれば、はっきりと内部を見学することができますが、段の下からでも、内部がまったく見えないことはありません。
「ゴーチェ子牛環室」は大正13年築の国登録有形文化財です。半円形のドームの入口が台形の屋根になっています。
階段の下から内部をのぞくことができます。
「6m太陽電波望遠鏡」は1970年製、日本初の電波望遠鏡です。最初はこの地三鷹で活躍。その後3ヵ所に移設されて観測に使用されました。現役を引退して2018年に、歴史遺産として展示されるために、また三鷹に戻ってきました。散策路を通り、車椅子で近づいて見学できます。
「自動光電子牛環」は昭和57年の築。現在は天文機器資料館として活用されています。今回取材時はコロナ対策で閉館していました。内部のバリアフリー状況は不明です。
「50センチ公開望遠鏡」は1994年に設置されました。市民のための天体観望会が開催されます。入口までスロープがあります。
「太陽系ウォーク」は太陽系の大きさを140億分の1に縮めて各惑星を紹介する展示施設です。惑星の距離を14億分の1に縮めて配置しています。したがってここでの1mは1,400万kmに相当します。散策路に沿って展示されているので、車椅子で見学できます。
三鷹市「星と森と絵本の家」のバリアフリー状況を紹介します。「星と森と絵本の家」は、国立天文台三鷹キャンパス内にある、三鷹市が運営する入館無料の文化施設です。大正時代に建設された「国立天文台旧1号官舎」を保存活用した施設で、エントランスがある新棟には回廊ギャラリー、旧1号官舎内は絵本館になっています。
エントランスへは段差回避スロープで向かいます。
新棟にはユニバーサルベッドが備わるバリアフリートイレがあります。
回廊ギャラリーを抜けて旧1号官舎に入る箇所で、土足禁止になります。車椅子は施設の雑巾でタイヤを拭いて上がります。
廊下は車椅子で自由に通行できます。
畳みの上は、車椅子利用者が来館すると、施設スタッフがマットを敷きます。その上に限り通行可能です。
旧書斎、旧客間、旧女中部屋、旧台所、旧浴室などを活用した絵本館です。そういう目でみると、建築物そのものが楽しめます。
縁側からは、お庭を眺めることができます。
三鷹市星と森と絵本の家は、スタッフが特別対応をして、車椅子用のマットを用意していただけるバリアフリー施設です。
森が広がる広い敷地の中の舗装路を散策して、大正から昭和初期に造られた天文台施設を見学し、バリアフリーな文化施設を利用できます。国立天文台三鷹キャンパスは、車椅子利用者にお薦めできる、穴場のお出かけ先です。
なお国立天文台三鷹キャンパスから、調布市の「都立神代植物公園」は約1㎞しか離れていません。別稿で紹介していますのでご参照ください。
(本稿は2020年11月に執筆しました)