2020年3月、国土交通省が「子育てにやさしい移動に関する協議会」の検討結果として、二人乗りベビーカーの乗合バス乗車を可能とすることを公表しました。
現状はバス事業者によってそれぞれの見解があり、サイズの問題で折り畳み乗車をルールにしているバス事業者もある状況です。「バリアフリー法に基づいた公共交通機関等のバリアフリー化」の観点から、協議会でその是非が検討されました。
以下、公表された新基準の概要を紹介します。
〇乗車方法
車椅子乗車ができる、低床式フラット構造のバス車両であることが前提です。
実証実験の結果、縦型は前扉を通過できますが、横型の二人乗りベビーカーは、横幅の問題で前扉は利用出来ません。したがって中扉から乗降します。
そして以下の3点が提唱されています。
・中扉から乗降してもらう場合は、運転者がその旨を分かりやすい案内(運賃支払い方法の案内を含む)をする。
・ベビーカー使用者の求めに応じて、運転者が補助 (必要に応じてスロープを設置)するか、または運転者が乗客に呼びかけて補助してもらう。
・運転者は、車いす使用者またはベビーカー使用者が既に車いすスペースで車いす等を固定している場合は、次のバスに乗車してもらうよう案内する。
〇バス車内での固定方法
縦型の場合、現状の固定具を利用できるベビーカーもありますが、横型は適応しません。そのため対応として、以下の手順が示されています。
・運転者は、座席(2席)の跳ね上げの補助を行う。
・運転者は、車いすスペースの座席に既に座っている方がいれば、移動をお願いする。
・使用者はベビーカーに装備されている子どもの肩と腰のシートベルトを着用する。
・使用者が進行方向後ろ向きにベビーカーをバスに設置されているベルトで 2 箇所固定する。
2カ所固定が出来ない構造の場合は、現在設置されている規格ベルトを2つ連接して使用し、二人乗りベビーカーの1箇所を固定する。そして車いす横転防止用の補助ベルトや規格ベルトを2つ連接するなどして、二人乗りベビーカーのもう1箇所を固定する。
※今後は、バス事業者及びバスメーカーは、座席を跳ね上げてもベビーカーを固定できる長さの固定ベルト(規格ベルト)の仕様・導入を検討する。
・使用者がベビーカーの車輪のストッパーをロックする。
・使用者は、バス走行時は片手でベビーカーのハンドルを支える。
〇国民への周知、運転者への教育
以上の乗降方法、車内での固定作業を実施するには、他の利用客の理解、運転手への教育、そしてバス製造会社やベビーカー製作会社の周知が必要です。
ベビーカー利用への理解キャンペーンの実施、バス事業者は社内教育等を通じ運転者等への周知を徹底、ベビーカーメーカーは、二人乗りベビーカーをバスの中で使用しないよう注意を促している取扱説明書の内容の見直しを実施する必要がある、としています。
障がい児と共に生きる家族が利用することも多い二人乗りベビーカー。2020年からのバリアフリー新基準は「乗合バス乗車は可」です。
(本稿は2020年6月に執筆しました)