重度の障がいがある人が、プールで運動をするための4つの選択肢

重度の障がいがある人が、プールで運動をするための4つの選択肢

障がいのある人にとって、適切な運動を正しく継続して行うことはとても重要です。プールでの水中運動は、重度の障がいのある人にとって有効な方法です。利用が難しいのは、胃ろうや気管切開などをしている方、プールの薬剤へのアレルギーのある方などです。

そういうことが無い人は、日常の移動にストレッチャー利用をしている重度の方でも、プールを利用している人はいます。

重度の障がいがある人が、プールで運動をするための4つの選択肢

重度障がいのある人が、継続してプールで運動をする方法として、考えられる選択肢は4つあります。

○医療機関のプール指導を利用する

病院の処方でプールを利用できる場合があります。整形外科またはPT(理学療法士)の診療治療行為になります。

プールがあり、このようなプログラムを行っている病院は、数は多くはありません。そのため、一般に希望者が多く、順番待ちや利用回数に制限がある場合があります。

診療費用は、健康保険適用になるプログラムが多いようですが、中には定額の料金がかかる保険外の特別コースとして運営されている場合もあります。

一般的なプログラムは、医師やPT1名に複数の障がい者が一度にプールに入ります。そのため、家族やヘルパーが介助者として一緒にプールに入ります。

○民間のプール教室を利用する

近年、障がい児コースのあるスイミングスクールが増えてきました。大人の障がい者用コースがあるスクールは、未だ少数です。

料金は業者により、そのコースの内容により様々ですが、家族が一緒に入水しないコースはマンツーマン指導になるので、一般に高額な料金になります。

○福祉法人などのボランティア活動を利用する

福祉法人、NPO法人などが主催する、プール教室があります。バリアフリー仕様の公共のプールを使用して、現地集合、現地解散するコースが一般的です。

水中運動の指導は、ボランティアが行います。そのため指導の内容は、担当するボランティア次第になります。

福祉法人のスタッフも準備から当日の運営まで関わるので、多くの場合、コース参加は無料ではありません。それでも、プール利用料金と参加費を足しても、民間のプール教室よりは低廉な料金なのが一般的です。

○家族がプールに連れて行く

家族が介助して水中運動をします。

自宅から通える場所にバリアフリーなプールがあること、家族だけですべての介助が成立すること、そして家族が自分で適切な運動方法を学び、実践出来る事が必要です。

重度の障がいがある人の場合、家族だけでプール運動を継続して行うことは、実際には大変です。

○重度障がい者と介助者がプールに求めたいバリアフリー要件

一般的に以下の要件があると、車椅子を利用する重度障がいの人のプール利用に役立ちます。

・広い更衣室がある

・異性介護が可能な更衣室がある

・室温、水温の設定がやや高めである

・プール用の車椅子がある

更に以下の設備があると助かります

・車椅子で使用できるシャワールームがある

・プール内にスロープで入水できる

・浮き具など運動を補助する道具がある

・障がい者専用コースがある

重度の障がいがある人が、プールで運動をするための4つの選択肢

なお、車椅子を利用する重度障がいの人を、水着から着替えさせると、どうしても床を濡らしてしまいます。本人の着替えと、次の利用者のために「床を清掃するモップやタオルがある」と助かります。

通常の運動が難しい重度の障がい者にとって、プールでの継続的な運動は、重要なテーマです。

(本稿は2020年1月に執筆しました)

別稿で「身体障がいがある人のトランポリンを使った運動方法」を掲載しています。ご参照ください。