障がい者福祉施設での「やむを得ない」身体拘束の実態

障がい者福祉施設での「やむを得ない」身体拘束の実態

障がい者を身体拘束することは違法行為です。しかしながら「やむを得ない」ケースはあり、一定のルールに従えば違法性は問われません。

2019年度に厚労省の事業として実施された「障害福祉サービス事業所等における身体拘束等に関する実態調査」から、2019年10月時点での「やむを得ない」身体拘束の状況を紹介します。

○違法性が問われないルールとは

調査結果を紹介する前に、障がい者の身体拘束に関するルールを簡単に説明します。

認められる場合の3原則は「切迫性」「非代替性」「一時性」です。そして「組織による決定」と「個別支援計画への記載」が必要です。更に「本人・家族への十分な説明」を行い、「必用な事項の記録」を残します。

以上のことを正しく行うことで「障害者総合支援法」や「児童福祉法」違反に問われることなく、また「身体拘束廃止未実施減算」の適用を受けません。

では、障がい者福祉施設での、身体拘束の実態をアンケート調査から抜粋して紹介します。

○3分の1の施設で身体拘束行為がある

調査に回答があった事業所数は521事業所です。その32.8%の事業所がルールに則って「身体拘束を行うことがある」と回答しました。

○最大数は「車椅子」への固定

実施した身体拘束の対象者人数が最も多いのは「車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける」です。

有効回答数で590人に実施され、その内「重症心身障害」が488人、その中で「医療的を要する児者」が55人です。

車椅子のベルトやテーブルによる固定は、重度の身体障がいがある人にとって、姿勢保持や食事、移動の安全のために必要です。厚労省のマニュアルでも、医療的に必要な固定は虐待ではないとされています。ただしその状態での「長時間の放置」は、虐待にあたる場合もあるとしています。

したがって身体拘束とはいっても、姿勢が保てない、側弯がある、テーブル席に移乗して食事がとれない、などの重度障がい者への医療的に正しい身体拘束と、座位が不安定な人が車椅子で外出する際の安全確保のためのベルト固定などが多いことが推定されます。

○強度行動障がい児者への身体拘束

該当数は最大で22名と少数ですが、強度行動障がいがある人への身体拘束は、想定される行為が現実に行われています。

・周囲の人に対して殴る、噛み付く、蹴る、つばをかける、髪を引っ張る等の他害を一時的に職員の体で制止する(22名)

・自分の意思で開けることのできない居室に隔離する(14名)

・公道等に急に飛び出したとき、あるいは飛び出さないように職員の体で制止する(14名)

・頭を柱に強くぶつける、自らの体を激しく傷つけるなどの自傷を一時的に職員の体で制止する(8名)

・自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む(5名)

・脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる(4名)

他にも1~2名ですが「ミトン型の手袋等をつける」「体幹や四肢をひも等で縛る」「向精神薬を過剰に服用させる」という回答があります。

またそれらの身体拘束を1週間で何日実施しているか、という質問には、多くの行為が「5日間」程度です。強度行動障がいがある人への身体拘束は、毎日のように「やむを得なく」行われています。

○身体拘束の廃止・適正化の取組み

身体拘束問題に関する、障がい者福祉施設での取り組み状況です。

「職員に対し、身体拘束の弊害の周知や、身体拘束をしない支援等についての研修会等を行っている」45.3%。

「利用者のアセスメントを十分に行い、身体拘束をしないための支援の質を高める工夫を行っている」 39.7%。

一方、身体拘束を廃止する場合の課題は、

「本人を事故から守る安全対策として、身体拘束以外に方法のない場合がある」 50.1%。「他の利用者を事故から守る安全対策として、身体拘束以外に方法のない場合がある」 47.8%。

支援現場での切実な悩みが回答されています。

 

障がい者福祉施設では、以上のような「やむを得ない」身体拘束が行われています。

(本稿は2020年9月に執筆しました)