障がい者とお金の問題 生活困窮者自立支援法と住居確保給付金をやさしく解説

生活困窮者自立支援法と住居確保給付金

自分の、あるいは家族の障がいのために、生活できる収入が得られない。コロナ禍を契機に、お金の問題に関する社会制度はマイナーチェンジされています。セーフティーネットにたどり着くためには、自分で制度を理解し、自分で行動する必要があります。

とても解り難い行政制度を解説します。理解すべきポイントに絞った簡単な説明のため、制度の詳細は省かせていただきます。ご承知おきください。

○給付金は家賃の補助金

障がい者本人がもらえるお金は、障害年金や障害者手当などがあります。

障がいのある家族と生活する人が困窮した場合、生活保護を受けることができます。

第三の手段が、本稿の主題である「住居確保給付金」です。これは「生活困窮者自立支援法」で定められた制度で、賃貸住宅に住む人が、お金がなく生活に困った場合、家賃の補助金がもらえます。ただし、様々な条件と上限があります。

○家賃補助金の上限額

生活しているエリアの家賃相場と世帯人数によって給付金の上限が異なります。つまり家賃が高い都市部で、大人数で生活していると給付金の上限金額が高くなります。大人数といっても、世帯人数の設定は「単身」「2人世帯」「3人以上世帯」の3区分です。

東京都特別区で「3人以上世帯」の場合、給付金の上限金額は月額69,800円です。

○給付金が減額される条件

実際に支払っている家賃よりも多い額は給付されません。仮に家賃が5万円なら、上限額は5万円です。

世帯収入が基準よりも多いと、給付金は減額されます。東京都特別区の場合、3人世帯で月額172,000円以上の収入があると、減額されます。収入は、児童手当、児童扶養手当、障害年金、遺族年金、国民年金などは、加算されます。

○給付される期間

原則3か月で、延長は2回まで。最大で9か月間給付金が支給されます。

ちなみに給付金は、自治体から大家に直接支払われます。受給者の手元は通過しません。

○給付対象者の条件

・預貯金が100万円以下

世帯全員の合計預貯金額に上限があります。絶対的な基準が100万円です。東京都特別区の単身世帯の場合、預貯金は504,000円が上限です。

・失業中あるいは大幅な減収中であること

稼ぎ頭が「誠実かつ熱心に求職活動」をしていながら、現状は基準以下程度の収入しかない人、またはその世帯が対象です。

○給付金額の計算方法

前出の例で「東京都特別区3人世帯の基準 月額172,000円 給付上限金額月額69,800円」の場合で、仮に月額家賃が10万円の賃貸住宅に入居しているとします。

この場合の給付金は 基準額172,000円+家賃100,000円‐(収入202,200円)=69,800円 つまり世帯収入合計が月額202,200円以下なら上限金額が支給されます。

逆算すると 基準額172,000円+家賃100,000円‐(収入272,000円)=給付金0円 つまり月額世帯収入が272,000円以上なら給付されません。

東京都特別区の単身者の場合「基準額 84,000円 上限額 53,700円」です。仮に家賃5万円の賃貸住宅に入居しているとします。

この場合は 基準額84,000円+家賃50,000円‐(収入80,300円)=上限額53,700円となり、基準額84,000円+家賃50,000円‐(収入134,000円)=0円になります。

したがって東京都特別区の居住者の場合

・家族で住んでいる場合で月収20万円以下

・単身者で月収10万円以下

このような収入の場合、上限にちかい住居確保給付金の給付を受けることができます。

※この他にも規定や条件があります。以上は単純化したモデルであることをご承知おきください。

○コロナ禍で変わったこと

・正社員でも申請可能

コロナ禍以前は、失業や廃業が条件でした。現在では、フリーランスや、たとえ正社員の身分が残っていても、大幅な減収が確認できれば申請できます。

・求職活動の報告義務免除

ハローワークでの求職活動とその報告が必須ではなくなりました。理論的には、学生や高齢者など、求職活動をしない人でも給付対象になります。

・給付金額上限の引き上げ

2020年4月から、実質的な給付金額の引き上げが実施されました。

○相談先と申請方法

住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法で規定される制度です。生活困窮者自立支援法とは、様々な支援策で生活困難者をサポートすることを定めています。そのワンストップ相談窓口が、各自治体に設置されています。

窓口の名称は自治体により様々で「生活相談センター」「くらし・しごとの相談室」「ほっとステーション」などの看板を掲げ、全国ほぼすべての市町村に設置されています。住居確保給付金の申請相談は、ワンストップ相談窓口で行います。

○支援計画の策定

生活困窮者自立支援法は、現在の生活困難者が、将来の生活保護受給者にならないように設計された一面があります。そのためワンストップ相談窓口では、相談者が就業し、安定した収入を得るための個別支援プランを作成します。

ワンストップ相談窓口は、住居確保給付金の申請受付窓口ではなく、相談者がこの先自立できるプランを作成することが目的の組織です。住居確保給付金の申請を含めた、個別の支援計画は、相談者本人ではなく行政側が作成します。

コロナ禍による緊急性の高い生活困難者の増加に備え、国からは都道府県に、住居確保給付金の迅速な対応をするように、事務連絡が発出されています。

お金で困ったときは、市町村の窓口に相談して下さい。窓口には相談内容に関する守秘義務があります。

(本稿は2020年10月に執筆しました)

別稿で「障害者扶養共済制度(しょうがい共済)をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。