重度の身体障がい児と生きる韓国の家族 日本での生活

重度の身体障がいと生きる韓国の家族 日本での生活

障がいのある子がいる韓国のご家族が、お父さんのお仕事の都合で、5年間日本に滞在された事例の紹介です。

ご両親とお子さんが二人。上のお子さんが女の子で重度の脳性麻痺の人です。下のお子さんは4歳下の男の子で、元気いっぱい。来日時、長女が9歳でした。

お父さんのお仕事は、韓国大企業のエンジニア。お母さんは専業主婦です。たいへんインテリなご夫婦ですが、来日した時点では、ご家族全員、日本語はほとんど解せず、ハングルと英語の会話でした。

障がいのある長女は、日本の公立の、重度の肢体不自由の人が通う特別支援学校に入学しました。在宅ではなく通学級です。ちなみに後年、下の男の子は就学年齢になると、韓国の子どもが通う学校に入りました。

長女の障がいの状況です。自立歩行は困難で車椅子生活。弛緩型の脳性麻痺で、しっかり座位をとるのは厳しいレベルです。上肢はある程度は動かすことが出き、発語はゆっくりとしたペースなら何とかできます。コミュニケーション能力はあり、表情は豊かです。

入学当初、お母さんは下の男の子も連れて、頻繁に学校に来ていました。ただし片言の日本語と英語のミックスの会話なので、聞きたいこと、確認したいこと、要望したいことが、どこまで正確に学校の先生や他の母親たちに伝わっていたかは不明です。

運動会などにはお父さんも来ていました。韓国式お弁当のメイン料理の海苔巻を沢山作って、皆さんに配る、社交的な性格のご家族です。

重度の身体障がいと生きる韓国の家族

年月とともに、ご家族全員、日本語が上達されました。その当時にお聞きしたことで現在どうなのかは確認していませんが、韓国には日本の特別支援学校にあたる教育機関は無いそうです。

韓国では障がいのある子の教育については、家族が自己責任と自己負担で行うのが一般的で、先生を自腹でつけるそうです。

例えばプールで運動をさせる場合、プールのレーンの貸し切りから指導の先生の手配まで、すべて家族が自分で、且つ自腹で行うそうです。

友達と一緒に学べる日本の特別支援学校の制度について、たいへん高い評価をされていました。

もう一つとても印象的な話がありました。学校の先生経由で聞いた話ですが、お父さんが、休日に障がいのある子どもを連れていけるお出かけ先が解らなくて悩んでいるというのです。重度の脳性麻痺の家族と一緒に行って楽しめる観光地、施設に関する情報が欲しいということでした。

障がいのある児が14歳の時、ご家族で韓国に帰国されました。韓国に帰ると、障がいのある長女が通える学校がないことを、ご両親は気にされていました。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「特別支援学校の夏休み帳・冬休み帳は家族の思い出の記録」を掲載しています。ご参照ください。