重度障がいがある子供と校外活動先を事前に確認する家族

重度障がいがある子供と校外活動先を事前に確認する家族

現場の状況を確認する調査を「実踏(じっとう)」と呼ぶことがあります。一般的にはあまり使われませんが、学校では良く使われる言葉です。

例えば社会科見学に行く工場に、先生が事前に状況を確認しに行くと、「○○先生、今日は社会科見学の実踏です」となります。

重度障がいのあるお子さんがいるご夫婦で、学校行事で行く校外施設をすべて事前に実踏する方がいます。

このお子さんは、日常的に吸引が必要で、ストレッチャータイプの車椅子を利用。会話は聞く理解は出来ますが自分では発声が出来ず、微かに動かせる体の部位は指先くらい、という重度の障がいがあります。

食事は初期食で、一回の食事に一時間はかかります。大きな音は苦手です。音楽も始めて聞く曲は抵抗があるため、何度も少しずつ聞かせて馴染むようにします。場所も人も「初めて」が苦手なお子さんです。

学校は体調が良くても原則週休3日、月火と行ったら水は休み、そして木金は通学します。ちなみに、この週の途中で体調管理のために休むことを、重度障がいの世界では「調整休(ちょうせいきゅう)」と呼んでいます。

このご夫婦は、お出かけの学校行事があるときは、出かける予定の施設にお子さんも連れて、事前に実踏に行きます。

自分の子どもが先生たちと行って過ごせる施設であるかを確認し、先生たちへの現地でのお願い事項をチェックし、子どもにその場を慣れさせておく、という3つの目的です。

ちょっとした近場の校外学習先にも、必ず事前に実踏にいかれます。

修学旅行などの場合は、事前に同じホテルに泊まって実踏します。途中に利用するレストランも実踏します。修学旅行のコースに沿って、すべてを実踏します。

重度障がいがある子供と校外活動先を事前に確認する家族

学校を信用していないということではなく、可能な限り学校行事にお子さんを参加させてあげたい、それも出来る限り順調に参加してもらいたい、という目的の実踏です。

重度障がいのある子と家族の、一つの事例の紹介でした。

(本稿は2019年12月に執筆しました)

別稿で「医療的ケア児と家族の生活 命と人権を守る社会の取り組み」を掲載しています。ご参照ください。