茨城県つくば市にある国指定史跡「平沢官衙(かんが)遺跡歴史」は、奈良・平安時代の役所跡である小高い丘を丸ごと「ひろば」として整備し、そこに3棟の高床式倉庫を復元整備した無料公開施設です。
身障者用駐車スペースがある無料駐車場があり、駐車場の横にバリアフリートイレがある案内所が設置されています。
車で取材に行き駐車場を利用したところ、車椅子利用をみた案内所のスタッフから、復元施設が建つ丘の上まで、車で上がることを薦められました。HPや現地に案内はありませんが、丘の上まで続く細い生活道路があり、車で上がると数台は駐車可能なスペースがあります。
通常の復元施設までの移動ルートは、丘の下の案内所から長い傾斜路を上がります。
丘は大きな溝で囲まれています。丘を大きく回りながら復元施設がある丘の上まで進むルートです。
芝生をまっすぐに上がることも可能ですが、整備された散策路は復元された「板倉」まで続いています。
散策路は基本的には舗装路面で、丘と調和するように一部芝生がある構造です。長い傾斜路ですが、車椅子で通行できないことはありません。
丘の上の駐車可能スペースからは、薄い砂利路面か、芝生の上を通行して復元施設に向かいます。どちらも車椅子が動かない路面ではありません。比較すると薄い砂利路面のほうが、車椅子で移動しやすい路面でした。
現地には「校倉」「土壁双倉」「板倉」3棟の解説版があります。先に目を通しておくと、理解が深まります。いずれも税として収められた稲などを保管する倉です。
3棟は並んで2棟、少し離れて向きを変えて1棟。遺跡の配置そのままの場所に復元されています。この丘には、他に20棟の建物跡が平面復元されています。
下の写真の右側が、正倉院と同じ校倉造りの棟。左側が土壁双倉の棟です。芝生には建物の要「礎石」が復元されています。この石の上に建物の柱が立っていました。
土壁双倉とはその名の通り、壁は土、そして中央部の空間で仕切られた2つの倉がある構造です。
土壁双倉の左側が板倉。3棟の中で最大規模の倉です。平沢官衙の倉は、板倉が多かったことが調査で判明しています。
供用時間中は校倉の横の小さな扉が開放され、そこから柵内に入り3棟に近づいて見学できます。
路面は芝生。少し力が必要ですが、車椅子で移動できないことはありません。
校倉と土壁双倉の間から、頭を出している筑波山の山頂を観ることができました。
1975年に本格的な調査が行われ、1980年に国史跡に指定され、1997年から復元工事が始まり、2003年に公開されました。「平沢官衙遺跡歴史ひろば」は、車椅子で1,000年以上前の倉が見学できる施設です。
常陸国筑波郡上平柳村出身、間宮海峡で知られる樺太調査を完成させた間宮林蔵の記念館を別稿で紹介しています。ご参照ください。
(本稿は2021年12月に執筆しました)