障がい福祉分野の令和3年度国家予算の概要

厚生労働省の障害保険福祉部が、令和3年度予算の概要を公表しました。全体では2兆2,351億円。臨時または特例の措置分を除く前年度比で、+929億円、+4.3%です。

主な政策の予算を紹介します。なお厚生労働省が「障害」と表記して公表している情報は、そのまま「害」の漢字表記を使用させていただきます。

 

〇良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆6,789億円

前年度比で947億円増、6.0%の伸び率です。障害福祉サービス等の報酬改定を行います。改定率は全体で +0.56%です。

障害保険福祉部の予算の約75%を占める部門です。予算全体の増加額を超える増額が行われました。この予算が有効に活用され、障がい福祉サービスがより充実することが期待されます。

 

〇地域生活支援事業等の拡充 513億円

障害者の理解促進や意思疎通支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業です。前年度に比べ8億円増額されました。

 

〇障害福祉サービス等提供体制の基盤整備(施設整備費) 48億円

就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所や、地域移行の受け皿としてのグループホーム等の整備促進を図る事業です。単純に前年度と比べると20億円減額されました。

ただし、令和2年度3次補正予算で 82億円が追加されているので、年度で区切らずに予算規模をみれば、実質的に増額されています。

 

〇聴覚障害児支援のための中核機能の強化 1.7億円

協議会設置や保護者への相談支援、適切な情報提供、聴覚障害児の通う学校等への巡回支援などに関する事業です。1.7億円は、前年度と同額予算です。

 

〇発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 7.0億円

発達障害者支援センター等に配置する発達障害者地域支援マネジャーの体制強化などに充てられる予算です。前年度比で7千万円増加しました。

 

〇芸術文化活動の支援の推進 4.6億円

地域における障害者の芸術文化活動への支援のための都道府県センターの設置促進や、障害者芸術・文化祭を開催する予算です。前年度比で5千万円増加しました。

 

〇視覚障害者・聴覚障害者等への情報・意思疎通支援の推進 4.2億円

読書バリアフリー基本計画を踏まえた、視覚障害者等が読書に親しめる環境を整備するための予算です。前年度は地域生活支援事業の内数予算でしたが、それに比べて約5千万円増加しました。

 

〇雇用施策との連携による重度障害者等の就労支援 7.7億円

企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても支障が残る場合や、重度障害者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めた場合に、地域生活支援促進事業により支援を行う、としています。厚労省が「雇用施策と福祉施策の連携」と自称している政策です。

 

〇農福連携による就労支援の推進 3.5億円

障害者就労施設への農業の専門家の派遣、6次産業化支援、障害者就労施設によるマルシェの開催等の支援を実施します。また、様々な産業と福祉の連携を推進するため、環境ビジネスや伝統工芸など、地域に根ざした産業での地域課題解決型の障害者就労のモデル事業を実施する、としています。前年度比で2千万円の増額です。

 

〇精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 7.2億円

都道府県等と精神科病院等との重層的な連携による支援体制の構築に加え、「心のサポーター養成事業」を実施し、地域や職場での支援を受けられる体制確保を推進します。前年度比で8千万円の増額です。

 

〇アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症対策の推進 9.4億円

全国拠点、地域拠点での取り組み強化に加えて、自助グループ等の民間団体を支援するとしています。前年度比で1千万円の増額です。

 

〇新型コロナウイルス感染症に係る障害福祉サービス事業所等に対するサービス継続支援事業 12億円

令和2年度3次補正予算案で 397億円が計上された「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」から独立した、新規の政策予算です。必要な障害福祉サービス等の継続支援と、緊急時の職員応援体制やコミュニケーション支援等の障害特性に配慮した支援を実施します。

 

〇生活のしづらさなどに関する調査の実施

概ね5年毎に実施している実態調査です。前回は平成28年度に行われました。5年目にあたる令和3年度予算に、調査実施に必要な予算を計上した、とされています。

 

サービスの報酬改定を中心に、令和3年度も障がい福祉関連予算は増額されています。

(本稿は2021年3月に執筆しました)

重層的支援体制整備事業 概算予算116億円で令和3年度から開始

2020年に改正された社会福祉法が2021年4月1日に施行されます。それによって創設された「重層的支援体制整備事業」が、令和3年度予算で概算116億円が計上されました。

重層的支援体制整備事業とは、「市町村において、地域住民の複合・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備する」取り組みです。

その背景や政策主旨については、別稿「2020年代の福祉政策「地域共生社会」と「新事業」をやさしく解説」を参照してください。

令和3年度の国の事業は、大きく2つに区分されます。一つは令和3年度に市町村が実施する重層的支援体制整備事業への支援で、概算予算は76億円です。この「重層的⽀援体制整備事業交付⾦」は「⾼齢、障害、⼦育て、⽣活困窮分野の相談⽀援や地域づくりにかかる既存事業の補助⾦等を⼀体化するとともに、多機関協働、アウトリーチ等を通じた継続的支援、参加支援といった新たな機能を追加して一括して交付する。」としています。

もう一つは、令和4年度以降に新事業の実施を希望する市町村への準備のための補助です。これには都道府県による後方支援事業への補助、人材育成に関する経費も含まれ、概算予算は40億円です。

厚生労働省は「本事業は、実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業であるが、地域共生社会の実践に向けた効果的な取組と考えており、多くの市町村に取り組んでいただきたい」としています。

また厚生労働省によると「モデル事業は平成 28 年度から実施しており、令和2年度では 279 自治体が事業」に取り組んでいるとしています。

改正社会福祉法の施行により、多くの地域で、「属性・世代を問わない相談・地域づくりの実施体制」の構築に取り組まれることが期待されます。

《生きるちから舎ニュース 2021年3月16日付》

令和3年度報酬改定案 医ケアなど重度障がい児者向けサービスを重視

2020年12月11日に開催された「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」のオンライン会議で、厚生労働省の「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について(案)」が公表されました。その中で、重度障がい児者向けサービスへの報酬を増やす方向性が示されています。その対象となる重度障がい者向けの主なサービスを紹介します。

 

○重度障がい者の地域移行、地域生活支援

・強度行動障害や医療的ケアなど、重度障害者支援加算の対象者を拡充する。

・日中サービス支援型の基本報酬を、現行報酬より重度者と中軽度者の報酬の差を拡大させ、重度者重視にする。

・強度行動障害支援者養成研修・行動援護従業者養成研修の修了者を配置しているグループホームについては報酬上の評価を行う。

・事業所単位で夜勤又は宿直の職員を配置し、複数の住居を巡回して入居者を支援する場合には、更なる評価を行う。

・重度障害者支援加算における強度行動障害を有する者に対する利用開始時の支援の評価を見直し算定要件を拡充する。

・生活介護における重度障害者支援加算に「重症心身障害者を支援している場合」に算定可能となる区分を創設し、人員配置体制加算と常勤看護職員等配置加算に上乗せする形で評価する。

・生活介護における常勤看護職員等配置加算に「常勤看護職員を3人以上配置」し、医療的ケアを必要とする障害者を一定数以上受け入れている場合に算定可能となる区分を創設する。

 

○重度障がい者のニーズを踏まえたきめ細やかな対応

・医療型短期入所の対象者について、福祉型(強化)短期入所事業所では対応が困難な高度な医療的ケアが必要で強度行動障害により常時介護を必要な障害児者等を加える。

・医療型短期入所の整備促進を図る観点から、特別重度支援加算の算定要件や単価の見直しを行うとともに、経営状況等を踏まえ、基本報酬についても見直しを検討する。

・医療型短期入所で準用している療養介護においては、医療的ケアが必要で強度行動障害を有する者など障害者支援施設での受け入れが困難な者についても、利用対象者となる旨を明文化する。

・経口移行加算及び経口維持加算について、咀嚼能力等の口腔機能及び栄養状態を適切に把握しつつ、介護保険における対応状況を参考に、口から食べる楽しみを支援するための多職種による取組プロセスを評価する。

・重度訪問介護における自動車によって障害者を移送するとき、駐停車時の緊急的な支援を行った場合、その緊急性や安全管理等について報酬上の評価を行う。

・重度障害者等包括支援の対象者の要件について、調査研究等において把握された利用実態を踏まえ、対象者要件の見直しを行う。

 

○医療的ケア児への支援の推進

・医療的ケア児に係る判定基準を導入する。

・障害児通所支援において、判定基準のスコアの点数に応じて段階的な評価を行う「医療的ケア児」の基本報酬区分を創設する。

・看護職員加配加算、障害児入所施設の看護職員配置加算の算定要件について、医療的ケア児に関する判定基準を導入し、見直しを行う。

・放課後等デイサービスの報酬において、著しく重度および行動上の課題のあるケアニーズの高い児童への支援について評価する(仮称:要支援児加算)。

・児童発達支援センターとその他の児童発達支援事業所の基本報酬について、ケアニーズの高い障害児への支援及び専門職による支援を評価する。

・医療型障害児入所施設における加算要件において、重度重複障害児加算の要件を見直し、強度行動障害児特別支援加算について、医療型障害児入所施設においても算定可能とする。

・医療型障害児入所施設における小規模グループケアの促進を図る観点から加算要件を見直す(台所・便所の設置を不要とする)。

 

○重度障がい者への適切なサービス提供を行うための報酬等の見直し

・医療・看護について、医療的ケアを要するなどの看護職員の手間の違いに応じて評価を行う。

・福祉型短期入所について、特に高度な医療的ケアを長時間必要とする場合の評価を設ける。

 

なお具体的な改定内容は「今後の予算編成過程を経て決定」されます。

《生きるちから舎ニュース 2020年12月16日付》