観光施設「心のバリアフリー認定制度」をやさしく解説

2020年12月に「観光施設における心のバリアフリー認定制度」が始まりました。認定を受けた観光施設は、観光庁が定める認定マークを使用することができます。

※以下の認定マークは環境庁のHPから転載しています。

心のバリアフリー認定制度

2020年12月24日付の「観光施設における心のバリアフリー認定制度要綱」から、認定基準のポイントを紹介します。

 

○あくまで「ソフト面」での取組が審査対象

「バリアフリー性能を補完するための措置」が審査対象です。したがって「心のバリアフリー認定」を受けた観光施設が、必ずしもハード面でも完ぺきなバリアフリー施設とは限りません。そのため、施設から発信すべき情報の内容は「バリア・バリアフリー情報」とされています。

 

○高齢者、障がい者への配慮を3つ以上行っていること

推奨される「心のバリアフリー」の内容は、刻み食に対応する、エントランスに杖を置く、補助犬のためのボウルを用意する、タブレットで意思疎通を図る、など様々です。

段差のある部屋に簡易据え置き型スロープを設置して、部分的に段差の解消を行うことも、配慮に認定されます。

それら実施している配慮を3つ、具体的な内容が分かるように、写真や資料を添付して申請します。

 

○施設内教育は3通りのパターンを設定

認定されるための必須要件が、心のバリアフリーに関する教育の実施です。以下の3つのいずれかを行っていることが要件です。

・年に一回以上、スタッフへの講習会を行っている

・年に一回以上、スタッフの勉強会を行っている

・手話通訳士等のバリアフリーに資する資格を持った職員を雇用している

なお「心のバリアフリー認定」の有効期間は5年間のため、今後の5ヵ年計画の提出が求められます。

 

○自社HP以外での情報発信が必須要件

要綱では「自らのウェブサイト以外のウェブサイト」、申請書では「他社サイト」と表現されています。「○○県観光ポータルサイト」「○○市のバリアフリーマップ」などで、ソフト、ハード両面でのバリアフリー情報を積極的に行っていることが認定要件です。申請書にはそのページのURLの記載が必要です。ただし、全旅連の「シルバースター」の登録認定を受けた宿泊施設は、この要件は除外されます。

 

○対象は宿泊施設、飲食店、観光案内所

認定申請できる観光施設は、正規の手続きによって営業許可を受けている宿泊施設、飲食店、観光案内所です。これに該当しないレジャー施設やサービス施設、交通施設、駐車場や荷物預かり所などの観光インフラ施設は、認定の対象外です。

 

以上の設計で「観光施設における心のバリアフリー認定制度」が始まっています。

(本稿は2021年1月に執筆しました)

「バリアフリーマップ」市町村作成マニュアルをやさしく解説

全国各地でバリアフリーマップが続々と作成されています。2018年にバリアフリー法が改正され、市町村によるバリアフリーマップの作成に法的な根拠ができました。そして2020年3月には、国土交通省によって「みんなでつくるバリアフリーマップ作成マニュアル~市町村による一元的なバリアフリー情報提供の手引き~」がまとめられ、公開されています。

バリアフリー法に基づく「バリアフリーマップ」には、何が求められているのか。作成マニュアルからポイントを抜粋して紹介します。

 

○マップ作成が推奨される3種のエリア

どのようなエリアを対象としたマップの作成が望ましいのか。マニュアルでは以下の3種のエリアを例示的に推奨しています。

・公共施設や商業施設の集積エリア

市民の外出先となる、町の中心部が推奨されています。町の中心部は、バリアフリー基本構想の重点整備地区に指定されているケースが多く、実際に市町村によって作成されているバリアフリーマップの約4割が重点整備地区を対象にしています。重点整備地区の面積の目安は、400ha以下とされています。

・観光地

観光客や買い物客を誘致したい観光地や商店街などが推奨されています。市町村が手がける前から、観光協会など民間団体によって、バリアフリーマップが作成されているケースが多々あります。その場合は官民一体になって、バリアフリーマップのメンテナンスや高度化に取り組みます。マニュアルには民間に丸投げしないようにとのニュアンスが記載されています。

・イベント会場

市町村内で開催されるイベントにあわせて、会場へのアクセスルート、会場内外のバリアフリー設備状況などを、バリアフリーマップとしてまとめることが推奨されています。この場合は会場周辺で配布することにも配慮した、情報の編集に気を配ります。

 

○エリア全体の経路情報が重要

特定の施設内の情報だけではなく、エリア全体、または施設から施設への移動ルートの情報が重要とされています。

段差が回避できるルート、安全な歩道が整備されているルート、雨天で濡れないルートなどの情報に加えて、ルート途中にあるトイレの情報などを付加することが推奨されています。

 

○バリア情報の提供も効果的

ここに段差がある、この区間が坂道など、バリア情報の記載が薦められています。現地現場の現実を正確に知ることで、利用者側が正しく判断できる情報の掲載が推奨されています。

 

○現地現物の写真は役立つ

写真の掲載が強く推奨されています。バリアフリー設備などの写真に加え、曲がり角など経路案内に関わる写真の掲載も薦められています。

 

○トイレとエレベーター情報は最重要

設備の中では、トイレとエレベーターは特に詳しい情報の提供が推奨されています。トイレは、広さと設備の詳細な状況がわかる、複数枚数の写真の掲載例が示されています。

 

○ピクトグラムを多用し、多言語対応する

マップの作成手法として、ピクトグラムを使用し、可能であれば多言語対応することが推奨されています。

 

○情報提供方法やメディアを工夫する

市町村が作成するバリアフリーマップをみれば必要な情報がすべてわかる、利用者側からみて一元的な情報提供になるように、しかし情報過多にならないように、工夫をすることが提案されています。

そのためには知りたい情報が検索できる機能を実装するなど、なるべく高機能なシステムによるバリアフリー情報の提供が推奨されています。

その一方で、情報内容の更新が簡単にできるPDFによるバリアフリーマップの提供も薦められています。

またWebを利用できない人のために、紙媒体での提供も必要としています。

マニュアルにははっきりとした記載はありませんが、「ペーパー版」「デジタル簡易版」「Web詳細版」など、複数のバリアフリーマップの作成が理想です。

 

○当事者と共にまち歩き点検をする

バリアフリーマップの作成にあたり、障がいのある人と一緒にまち歩きをして、現地現場のバリアフリー状況を点検することが推奨されています。

その行動を通じて、障がい者の意見を聞き、エリアのバリアフリー状況を正しく評価し、そして今後の見直しにつなげることが求められています。

 

○よりよい計画のための現状把握に役立てる

バリアフリーマップの作成によって、エリアの現実と障がい者の希望を把握し、バリアフリー法で市町村による作成が規定されている「マスタープラン・基本構想」と連動させることが求められています。

また、災害時の障がい者避難に役立てる「逃げるバリアフリーマップ」などへの応用が推奨されています。

 

「市町村による一元的なバリアフリー情報提供」を推進することで、現在と未来の町がつながることが期待されています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

バリアフリー法によるマスタープラン基本構想制度をやさしく解説

各市町村は地域のバリアフリーを進めるための「マスタープラン」と「基本構想」を作成する努力義務があります。また障がい者や関係者は、マスタープランと基本構想の内容を提案し、検討に参加できる権利があります。

バリアフリー法で定められている「マスタープラン基本構想」制度について、ポイントを絞って簡潔に紹介します。

 

○マスタープランとは具体性のある地域のバリアフリー化計画

いつまでに、どこを、こうする。特定のエリアに関するバリアフリー化の具体的な目標がマスタープランです。

「3年後までに駅と病院をつなぐルートの段差を解消する」などが各論のイメージです。

特定のエリア全体のプランなので、上記のような各論が複数組み合わされ、エリア全体の移動が円滑になる計画を策定することが、市町村の努力義務です。

 

○エリアの広さは200m×200m以内

国土交通省から、マスタープラン作成のガイドラインが公表されています。それによると対象エリアは「生活関連施設が徒歩圏内に集積している地区」で、「生活関連施設及び生活関連経路についてバリアフリー化の促進が特に必要な地区」、そして「その間の移動が通常徒歩で行われる地区」です。広さについては「徒歩圏内の考え方の目安として、面積約 400ha 未満の地区」としています。

生活関連施設とは「旅客施設、官公庁、郵便局、病院、文化施設、大規模商業施設や公園等」です。

集積している地区とは「旅客施設または官公庁施設、福祉施設等に該当するものが概ね3以上ある」地区です。

しかしながら「旅客施設を含まない移動等円滑化促進地区の設定が可能」とし、「バリアフリー化を促進することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切な地区」であればよいとしています。

広範囲ではなく、範囲を狭めた地区のバリアフリー化を、なるべく具体的に計画することがマスタープランのポイントです。

 

○具体的な事業計画がなくても可

目標の具体性は求められますが、ガイドラインはあくまでバリアフリー化に「係る方針」で、「地域のバリアフリー化の機運醸成を図ること」が目的です。したがって、マスタープラン策定時に、具体的な事業計画がなくても問題はありません。先にマスタープランがあり、後からそれを実現する事業計画を進めることが許容されています。

その一方、令和2年5月のバリアフリー法改正により、マスタープランを具体的な事業として位置づけることが可能になり、令和2年度予算より「市街地整備事業における歩行空間の整備や、都市公園・緑地等事業において公園のユニバーサルデザイン化を図る場合にも交付金の重点配分の対象」となりました。現在ではマスタープランをそのまま実施計画として、事業を予算化することが可能です。

 

○マスタープランと心のバリアフリー

令和2年5月のバリアフリー法改正により、令和2年6月 19 日以降に作成するマ スタープランには、「心のバリアフリー」を促進するソフト対策の記載が義務付けられました。

「地域住民等のバリアフリーに関する理解の増進と協力の確保」を記載し、その取り組みを具体的な事業として位置付けることができます。

 

○マスタープランは5年毎に見直す

ガイドラインでは「おおむね五年ごとに」、対象エリアの「状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、移動等円滑化促進方針を変更するもの」としています。

重要なチェックポイントとして「多くの人が利用する経路の選定」「生活関連施設相互のネットワークを確保」「隣接自治体との連続性を確保」などが挙げられています。

 

○マスタープランと基本構想

バリアフリー法では、「マスタープラン」と「基本構想」の作成が定められています。マスタープランと基本構想は別々に存在する計画ではありませんが、法律上は区分けされています。

「基本構想」は平成 18 年のバリアフリー法で、「移動等円滑化基本構想」として定められた、バリアフリー法第 25 条等に記載されている「構想」です。

「マスタープラン」は平成 30 年5月の改正で「移動等円滑化促進方針」としてバリアフリー法第 24 条の2等に記載されている「方針」です。

法律上は「方針」である「マスタープラン」が上位概念で、その事業計画が「基本構想」という関係です。

しかし、その内容を表現する際には「マスタープラン・バリアフリー基本構想」などとされることが多く、事実上一体化した計画として扱われています。方針と構想を併せて、市町村の「マスタープラン基本構想」と理解したほうが、わかりやすいと思われます。

 

バリアフリー法に基づく「マスタープラン基本構想」制度は、市町村にバリアフリーを推進する努力義務を課し、住民及び関係者にその内容を提案する権利をもたらしています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)